センター通信
産業保健相談員レター 2026年8月 ~法改正によるカスタマーハラスメント対策:カスハラが生じない社会の実現に向けて~
2026.09.02
法改正によるカスタマーハラスメント対策 ~カスハラが生じない社会の実現に向けて~
産業保健相談員(メンタルヘルス担当) 北野 智子
近年,顧客の言動が社会通念上許容される範囲を超え,労働者の就業環境を害するカスタマーハラスメント(以下,「カスハラ」という)が社会問題化しています。これを受けて,令和7年6月に法改正が行われ,令和8年10月1日より,事業主においてカスハラ防止のための必要な措置を講じることが義務付けられることになりました。現在各企業等の関係箇所においては,規程や規則の見直しや対応マニュアルの作成の作業等が進められているのではないでしょうか。
職場におけるカスハラとは,3つの要素(①顧客,取引先,施設利用者など事業に関係する者の言動であること,②労働者が従事する業務の性質や状況に照らして社会通念上許容される範囲を超えること,③労働者の就業環境を害すること)をすべて満たす場合が該当します。
典型的なカスハラ行為と考えられる,商品・サービスと無関係な要求,長時間にわたる怒鳴り込みや土下座の強要,脅迫的言動やSNSでの誹謗中傷,本来のサービス範囲を超える過度な要求といったことは,労働者に精神的苦痛を与えるだけでなく,離職などにも直結します。
そこで,本コラムでは,事業主,労働者,顧客それぞれが行う対策や具体的な対応事例を紹介したいと思います。
事業主は,発生時の対応マニュアルの作成,労働者の相談窓口の設置,労働者の相談等を理由とした不利益な取り扱いの禁止,防止対策として接客対応の記録管理や向上などに取り組まなくてはなりません。また,労働者は,カスハラを受けた場合,トラブルをひとりで抱え込まず,職場で経緯を共有し,必要に応じて相談窓口を活用するといった意識を持たなくてはなりません。一方顧客も,過剰な要求や不当な言動といったカスハラにつながる可能性がある行為を控えることが求められます。
昨今なされた具体的な対応として,厚生労働省委託事業「あかるい職場応援団」で紹介されているカスハラ防止対策企業事例では,運送事業における労働者向けの研修において,「お客さまからの過度な言葉や行為によって怖い,辛いと感じた際にはその気持ちを表現してもよい」と伝えているとのことです。事業主が研修の中で労働者を守る姿勢を示すことで,安心して働くことができる職場風土の醸成につながり,また,過度な言動や行為をしていた顧客が冷静さを取り戻し,自分が悪かったという気づきにつながることもあるとのことです。
このような取り組み例から明らかなように,具体的な対応を講じることで,事業主,労働者,顧客の間でより良い関係性の構築がなされ,結果,カスハラが生じない社会の実現に向かいます。
法改正に伴い,各企業等がより具体的なカスハラへの対応を講じていくことを期待します。
