独立行政法人 労働者健康安全機構広島産業保健
総合支援センター


センター通信

産業保健相談員レター 2025年12月 ~アルコール依存症について~

2025.12.01

アルコール依存症について

 

加賀谷有行

よこがわ駅前クリニック

瀬野川病院KONUMA記念依存とこころの研究所

産業保健相談員

 

皆さん、こんにちは。12月になって忘年会などアルコールを身近に感じる人も多いかもしれません。今回は、アルコール依存症について紹介します。

アルコール依存症の診断基準ですが、①渇望(アルコールを摂取したいという強い欲望)、②コントロール障害(飲酒の開始、終了、あるいは飲酒量に関してコントロールが困難)、③離脱症状(飲酒を中止もしくは減量した時の生理学的離脱状態)、④耐性(飲酒量を増やさないと以前のように酔えない)、⑤飲酒中心の生活(飲酒のために、それに代わる楽しみや興味を次第に無視するようになり、飲酒の時間や、酔いが醒めるまでの時間が延長する)、⑥有害な使用(明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず、依然として飲酒する)のうち、過去1年で3項目以上に該当するとアルコール依存症と診断できます。2025年度の上半期のよこがわ駅前クリニックのアルコール依存症初診の平均年齢は約50歳で、患者の多くは労働者でした。専属産業医や嘱託産業医から紹介されて受診する患者が少しずつ増えています。労働者のアルコール関連問題は、遅刻、欠勤、プレゼンティーイズム、仕事のミス、復職の困難さ、休職の繰り返しなど多岐にわたるので、読者の皆さんは苦手意識を持たれているかもしれません。そんな皆さんに役立つかもしれない情報を二つ紹介します。

一つ目は、産業精神保健32巻(2024年)に職場のアルコール関連問題についての特集が掲載されています。

職場のアルコール問題の解決:特集にあたって(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjomh/32/2/32_161/_pdf/-char/ja

職場のアルコール問題と予防教育(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjomh/32/2/32_184/_pdf/-char/ja

職場で使える!アルコール使用障害の予防のための簡易介入プログラム(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjomh/32/2/32_190/_pdf/-char/ja

産業保健職が行う減酒指導(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjomh/32/2/32_203/_pdf/-char/ja

など、産業保健に携わる読者の皆さんの活動に役立つ内容です。ぜひご一読を。

二つ目は、広島県のアルコール健康障害サポート医(サポート医)とサポート医(専門)についてです(https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/57/alcohol-support-doctor.html)。サポート医はかかりつけ医や産業医や救急医等を対象として、アルコール健康障害に対する相談を担います。サポート医(専門)は精神科医等を対象として早期介入を担います。サポート医養成研修は年に4回開催されており、1回2時間のプログラムです。サポート医(専門)養成研修は年2回合計5時間です。内容は、アルコール依存症概論、通院治療と復職支援、認知行動療法の紹介などです。産業医単位の取得が可能となっています。産業保健相談員の皆さんにも受講してサポート医として登録していただけると幸いです。医療職ではない読者の皆さんには、労働者のアルコール関連問題で困ったときにサポート医またはサポート医(専門)に相談することを考えてみてください。サポート医とサポート医(専門)の名簿が上記アドレスに掲載されています。