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産業保健相談員レター 2026年2月 ~女性の健康とキャリア:社内風土の醸成が拓く企業の成長戦略~

2026.02.02

女性の健康とキャリア:社内風土の醸成が拓く企業の成長戦略

豊田 紳敬

 

女性の健康課題に対する政策は、戦後の「母性保護」から「女性活躍推進のための経済的・社会的な基盤整備」へと、時代とともに変化してきています。2025年6月10日にはいわゆる「女性版骨太の方針2025」が 発表されました。

女性の健康は、その生涯を通じて女性ホルモンの大きな影響を受けます。思春期、性成熟期、更年期、老年期といった各ライフステージには、それぞれ女性特有の健康課題が存在します 。近年、女性の社会進出が進み、その活躍が一層期待される中で、企業にとって女性の健康支援は重要な課題となっています。

女性の約5割が、女性特有の健康課題などにより「勤務先で困った経験がある」と回答しており、最も多く挙げられるのが月経関連の症状や疾病です。月経痛が強く日常生活に支障をきたす月経困難症や、月経前にイライラ、倦怠感、集中力の低下などが現れる月経前症候群によって、仕事のパフォーマンスが半分以下になる人が45%にも上るという調査結果があります。

また、不妊治療と仕事の両立も深刻な課題です。5.5組に1組が不妊の検査や治療をしていると言われており、治療中の女性のうち23%が仕事と両立できずに離職しています。また「昇進や責任の重い仕事につくこと」や「正社員として働くこと」など、キャリアを諦めることもあり、これは女性だけでなく企業にとっても大きな損失です。

一方で、月経困難症や月経前症候群があっても「何もしていない」人が最も多いという現状があります。異常を放置すると、子宮・卵巣の病気が悪化したり、不妊の原因になったりするリスクがあります。自分の健康を管理し、適切な情報を活用するヘルスリテラシーを高めることが、女性が長く働き続け、能力を発揮するために不可欠です。

しかし、これまで女性の健康課題に関する知識を得る機会は、ほとんど有りませんでした。女性に対しては健康管理の重要性を伝え、男性や管理職に対しては女性特有の健康課題とその仕事への影響を学ぶ機会を作ることが求められます。性別・役職を問わない社内研修会の開催、社内コミュニケーションツールによる情報提供、プロジェクトチームの設置、などで知識の共有を図る必要があります。

知識の共有と並行して、従業員が安心して制度利用できる環境整備が不可欠です。生理休暇の取得時に「女は良いなぁ」と言われたり、「生理くらいで休むの?」と女性管理職から理解が得られなかったり、プライバシーに関わる病状を公開されてしまう、といった心理的安全性の低い職場環境を示す声があがっています。

女性特有の健康課題による生産性の低下や、キャリア継続の断念という損失を防ぐためには、女性の健康課題について配慮する社内風土の醸成をすることが必要です。その取り組みは女性のみならず、男性の労働環境改善にも繋がっていきます。すべての従業員が健康で能力を発揮できる職場を目指して、女性の健康課題に取り組みましょう。