センター通信
産業保健相談員レター 2026年3月 ~心の健康は誰にとっても重要な課題です~
2026.03.03
心の健康は誰にとっても重要な課題です
原田 陽子
- あなたの「心の平熱」を知っていますか
私たちはコロナ禍を経て、体調の変化に敏感になり、健康を気遣うことが日常となりました。発熱や咳といった目に見える症状だけでなく「体調が優れないときは無理をしない」という意識が社会全体に広がっています。
では、「心の調子」についてはどうでしょうか。
体温計で熱を測るように「今日の心の温度は何℃だろう? 平熱かな?」と、自分の気分の波や具合に向き合う機会はありますか。心の不調は周囲から見えにくく、本人さえ自覚がないことも少なくありません。だからこそ、メンタルヘルスを「誰もが気を配るべき大切な体調の一部」と捉え、自分と周りの双方で意識し合うことが必要です。
- 回復は「三歩進んで二歩下がる」プロセス
心の不調も体の怪我と同様、適切な休養がなければ回復は長引きます。また、風邪や骨折のように一直線に良くなるものでもありません。
メンタルヘルスの回復過程では、「良くなったように見える時期」が訪れます。しかし、それはまだ回復の途上に過ぎず、エネルギーが完全に戻りきっていないことが多いのです。周囲から元気そうに見えても、本人自身も完治したと思っていても、内側ではストレス耐性が不十分な場合があり、急に活動量を増やすと再発・悪化のリスクがあります。
状態に波があるのは当たり前で「良い時とそうでない時を繰り返しながら、ゆっくり回復していくもの」だと理解しましょう。ある一時点だけを見て「もう治った」と安心する、「十分休暇を取ったから大丈夫だ」と決めつけるのではなく、慎重に判断していくことが求められます。
- 「環境」を整えることが大きな鍵
心の健康維持や回復は、本人の努力や性格だけで解決するものではありません。休養や薬に加えて、環境を整えることも重要です。
刺激となる人や物事と距離を置く、スマホの使用を控えるなどの工夫も必要です。また生活上では経済的な不安の軽減、時間的なゆとり、そして安心して過ごせる場所の確保などが回復を支えます。職場においては業務量の調整や配置転換など、負担を軽減するための具体的な仕組みを検討しましょう。
現在、日本では生涯を通じて「4人に1人」が、何らかの心の病を経験すると言われています。決して特別なことではありません。あなたも私も、誰もが自分を労わり、心の健康に目を向けて、健やかな毎日を過ごしていきましょう。
