独立行政法人 労働者健康安全機構広島産業保健
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センター通信

産業保健相談員レター 2022年11月 ~表情は伝染する:笑顔の効果~

2022.11.27

産業保健相談員 加登 朝子

 「笑顔」は大きなチカラを持っています。

 気持ちを伝えるためには、言葉だけでなく、話し方や表情、姿勢などの非言語のコミュニケーションが大きく影響します。より良いコミュニケーションをとるためには、言葉以外の要素がとても大きな役割を果たします。

 こうした言葉以外の要素は、オンラインで交流することが多くなったコロナ禍においてもさらに重要です。平板な画面に映った相手の顔を見ながらの話は、とても疲れます。それは、対面で話している時のように自然な形で交流をしようとすると、お互いにかなりの想像力が必要になるからです。対面やオンライン交流のいずれにしても、笑顔で声を出しての挨拶が望まれます。これには科学的な裏付けがあるのです。

 自分が笑顔になると、相手の表情は和らぎます。なぜならば表情は伝染するからです。私達は、相手の表情に合わせて、自分の顔の筋肉を微妙に動かしています。相手が笑顔になると、私達の笑顔の表情筋が少し動き、その時の自分の表情筋の動きから、私達は、相手の気持ちを読み取っています。相手が厳しい表情になると、それに合わせて、私達の表情も厳しくなります。すると、その場の雰囲気も悪くなって、気持ちも沈んでしまいます。気持ちが沈んだり精神的に追いつめられたりしている時には、無意識のうちに表情が厳しくなっていますから、注意が必要です。

 逆に、お互いに笑顔になると、その場の雰囲気が和らぎ、気持ちが軽くなってきます。しかも、その時に気持ちが軽くなるのは、雰囲気が明るくなるからだけではありません。笑顔になった時の表情筋の動きが脳に伝わって、気持ちを軽くしている可能性があると言われています。そうだとすると、自分の笑顔が伝わって笑顔になった相手の体も、笑顔の表情筋が脳を刺激して気持ちが軽くなっているはずです。自分の笑顔が自分の気持ちを軽くし、その場の雰囲気を明るくして、そして相手の気持ちまで和らげるという、そのことを考えただけでも嬉しくなってきます。

 しかし、私達は、自分の表情のことをほとんど意識していません。表情を意識することは、こころの健康を考える上では大切なことなのです。自分の気持ちだけでなく、周りの人の気持ちや雰囲気にも、大きく影響を与えているのですから、自分の表情をちょっと意識して人に接してみるその効果は量りしれません。

                                         参考文献【大野裕のこころのトークより】