独立行政法人 労働者健康安全機構広島産業保健
総合支援センター


センター通信

産業保健相談員レター 2023年1月 健康経営に貢献する森林資源を用いた新たな健康づくり ~「森林セラピー」への誘い~

2023.01.05

産業保健相談員(産業医学担当) 小林 敏生

 新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中で、過大なストレスを抱える労働者が増加しています。
その中で、オープンスペースである自然環境への滞在やリモートワークの健康増進効果に注目が集まっています。
2021年および2022年の広島産業保健総合支援センターの研修会においても、「職場での森林セラピーを用いたメンタルヘルス対策」として、森林セラピー基地のある広島県安芸太田町において
産業保健セミナー・実地研修を行い、産業医をはじめとして多くの産業保健関係者の参加を得ました。(http://morimin.jp/)
 
 「森林セラピー」とは、NPO法人森林セラピーソサエティ(https://www.fo-society.jp/)の定義では「科学的な証拠に裏付けされた森林浴」のことで、森林セラピーが楽しめる「森林セラピー基地」とは、現地と都会で比較実験を行った結果、癒しの効果、疾病の予防効果が科学的に認められた森林空間のことです。2022年においては全国65ヶ所に「森林セラピー基地」があり、広島県内では安芸太田町と神石高原町が認定されています。森林空間への滞在がもたらす生理・心理効果としては、ストレスホルモンの減少、酸化ストレスマーカーの減少、血圧の低下、免疫力の向上、抑うつの改善、自律神経バランスの改善、健康関連QOLの上昇など様々な健康増進効果が認められています。
 
 働き方改革の実現や健康寿命の延伸、新しい生活様式の実践など急務となっている社会課題に対して、その解決方策の一つとしても森林空間の利用が注目されています。
 現在、森林セラピーで得られた様々なエビデンスを企業の健康経営に活用すべく、林野庁、国土緑化推進機構が主導して、森林資源を活用した企業の健康経営をめざす「森林サービス産業」が進行しています(https://www.green.or.jp/topics/fs2020/)。

 

 そこでは森林空間を利用して、社員の生活習慣病予防、メンタルヘルスの改善を目的とした社員研修やプログラム、早期離職対策等につながる社員研修、働き方改革へのソリューションとなるテレワークの実施など、企業の健康経営に繋がる様々なエビデンスが集められています。
 

 広島県安芸太田町も令和4年度の健康経営分野の「森林サービス産業」のモデル地域に選定され(全国で3地域が選定)、健康経営に貢献する森林資源を用いた新たな健康づくりを進めています。企業の経営部門、産業保健スタッフの皆様におかれても、新たな企業の健康経営・健康増進の方法として、「森林セラピー」の活用を検討されてはいかがでしょうか?