独立行政法人 労働者健康安全機構広島産業保健
総合支援センター


センター通信

産業保健相談員レター 2023年3月 ~依存症対策、取り組んでいますか?~

2023.03.01

 産業保健相談員(カウンセリング学担当) 菰口 陽明

 「もっと早く病気だと知っていればよかった・・・」
 私がアルコールや薬物、ギャンブル等による依存症を抱えるクライエントや家族から何度も聞いてきた言葉です。医療機関のソーシャルワーカーとして彼らの回復支援にかかわるなかで、彼らと出会った時には身体的、心理的、社会的に失っているものも大きく、早期介入と職域等の関係機関との連携の必要性を強く感じてきました。
なかでも県内のアルコール依存症者は約12,300人、そのうち治療を受けている人はおよそ1割の約1,500人と推定されています。本来治療の対象である人が適切な治療、支援を受けられていない、
いわゆるトリートメントギャップが顕著であり、全国的にも対策が急務となっています。
 国では2014年、アルコール健康障害対策基本法(以下、基本法)が施行、発生予防から進行予防、再発予防まで包括的な取り組みを推進する指針が打ち出され、第2期推進計画では職域も含めた多機関、多職種連携が重点課題として明記されています。広島県でも2017年に独自の基本計画が制定され、「適切な支援につなぐ仕組みの構築」、「相談から治療、回復支援に至る切れ目のない支援体制の整備」に取り組むことが示されています。メンタルヘルス対策を含む職域での健康増進の観点からも、依存症の一次予防、二次予防、三次予防を取り組んでいくことはたいへん重要です。ここでは職場での取り組みのポイントとして以下の3つをお示しします。対策を進めるうえでの困りごとがありましたら当センターにお気軽に御相談ください。
 
1.予防知識を深め、広めて問題に気づける風土をつくろう
  職員や家族に対して、アルコールの分解時間や多量飲酒が翌日の飲酒運転をまねくこと、ギャンブルや薬物の依存性等について啓発しましょう。飲酒習慣をチェックしたり、アルコール体質判定を
 実施し、予防意識を高める方法もあります。産業医や保健師等の健康管理職、人事担当者、管理職には依存症の知識は必須です。       
2.みえる問題だけでなく、よくみればわかる問題に気づき、介入しよう
  酒臭や欠勤、体調不良等、背景に飲酒問題が隠れている場合もあり、発見した時こそ介入のチャンスです。その際には人事担当者、産業医や保健師などの健康管理職、家族が連携し、情報を共有し
 た上で意思統一しておくことが大切になります。  
3.地域の社会資源と自分自身がつながり、積極的に活用しよう
  広島には依存症からの回復を目指す自助グループ(断酒会やAA、GA、NA)が充実しており、その多くは退社後の夜間に開催されています。また、専門医療機関も各地域に設置されていますので、
 日ごろから相談窓口や治療内容などを確認しておきましょう。
 
参考:広島県(2017)「広島県アルコール健康障害推進計画 概要版」