独立行政法人 労働者健康安全機構広島産業保健
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センター通信

産業保健相談員レター 2023年4月 ~健康経営とフェムテラシーについて(産業医学一口メモ)~

2023.04.03

産業保健相談員(産業医学担当) 吉岡 嘉暁

<はじめに>
 Femtech(フェムテック)とは、最近聞かれるようになった造語(合成語)でFemale(女性)+Technology(技術)のことです。女性のライフステージにおける「生理・月経」「妊娠期・産後」「プレ更年期・更年期」等の様々な課題を解決できる製品やサービスをFemtechと呼んでいます。
 この記事を書いたきっかけは、今年(令和5年)2月3日に広島国際会議場で行われた「中国地域発 企業・自治体のためのフェムテックシンポジウム」(~「みんなゴト」として考える、働く女性の健康課題と経営改革~)(中国経済産業局企画)に参加したことでした。シンポジウムの内容は、これからの健康経営を進めていくうえで重要なテーマ(課題)と思いましたので情報紹介を兼ねて書きました。

<参加したシンポジウムの次第概略>
 1 地方におけるフェムテック(日本フェムテック協会 幹事 小口彩子)
 2 経済産業省の取り組み(経済産業省 経済社会政策室長 川村美穂)
 3 自治体の取り組み(三原市役所)
 4 企業の取り組み
  (1)ダイバーシティ推進とFemtechの取組について (山口ファイナンシャルグループ 人材支援部 林田あゆみ)
  (2)女性・子育て支援の医療サービス開発とスマートヘルスケアシティの創造(山陰パナソニック 社長 渡部幸太郎、担当部門長 津森孝史)

<日本フェムテック協会について>(ホームページ https://j-femtech.com/ )
 設立の紹介として次のような記事がありました。
 毎月の生理、妊娠、出産、更年期など、女性の人生には多様なライフステージがあります。どんな時も「こころ」と「からだ」のバランスをとりながら自分らしく活躍してほしい。それが当然な社会になってほしい。悩みに寄り添った支援ができる存在でありたい。こんな発想から当協会は生まれました。(2021年7月21日設立)

<フェムテラシーとは>
 フェムテックにさらにリテラシー(知識を活用する能力)を組合わせた 「フェムテラシー」を向上させることで、女性が自分自身のホルモンマネジメントを行い、心身の不調によって昇進を諦めたり退職を余儀なくされることがないよう、健康の悩みをオープンに共有し助け合える職場環境を整えたいとしています。
 女性の健康というと、特に男性は「男がわかるわけがない」と思いがちです。時には女性同士でも、個人差の大きい月経痛(生理痛)のつらさやメンタルヘルス不調は理解してもらえないことがあります。しかし、だからこそ女性の健康について学ぶこと、知ることがフェムテラシー推進の第一歩になります。

<フェムテック検定について>
 日本フェムテック協会のホームページに「日本フェムテック協会認定資格」の紹介が有ります。「フェムテック協会では、女性の「こころ」と「からだ」を理解するための基礎知識をフェムテラシーと呼んでいます。女性のみならず誰もがフェムテラシーを高めることでより良い社会が生まれると信じています。医学的見地に基づいた検定を通して、フェムテラシーの高い社会づくりに貢献したいと考えています。」
 フェムテック検定には3級、2級、1級がありますが、3級はフェムテック協会のホームページのWEB上で受験可能(無料)です。テストを通じて、自分自身の現在のフェ
ムテラシー理解度を把握することが出来ます。受験後には解答と解説を読むことが出来ます。産業保健スタッフの方、管理監督者の皆さま、経営層の皆さまには、まず3級で自分の理解度を試されてみてはどうでしょうか。(私も試してみました。)ホームページには2級、1級へのステップアップ(有料)も紹介してあります。

<ダイバーシティ推進とフェムテラシー>
 ダイバーシティとは、日本語では「多様性」と訳されます。多様な人を認めようということです。その多様な人の中で注目が集まったのが、「女性」というカテゴリーでした。日本の女性は、男性と同じ教育を受けて育っているにもかかわらず、女性だからという理由で、職業選択のチャンスが少なく、就職後も経験を積む機会が与えられてきませんでした。でも年々深刻化する働き手不足に、政府も企業も注目したのが女性の活躍です。女性管理職比率の目標値を設定したり、家庭や育児と両立しやすい制度を整え、女性が働き続けやすい環境を作ったり、企業として女性の活躍推進に力を入れてきています。上記シンポジウムの山口ファイナンシャルグループの取り組みもその素敵な一つと思いました。

<健康経営とフェムテラシー>
 これまでの合理化や効率化を求めるだけのやり方は、ワークライフバランスを重視しダイバーシティを尊重する現代には通用しなくなってきています。健康経営とフェムテラシーは同じ方向を向いた協働ベクトルであり、フェムテラシーを欠いた健康経営は有り得ない時代になってきました。