独立行政法人 労働者健康安全機構広島産業保健
総合支援センター


センター通信

産業保健相談員レター 2023年11月 ~運動指導等を通じた労働者の健康保持増進のための個別訪問支援事業;転倒・腰痛ゼロ災!訪問支援事業~

2023.11.01

産業保健相談員(運動指導担当) 松本 直子

 令和5年より「運動指導等を通じた労働者の健康保持増進のための個別訪問支援」がスタートとなり、実際に事業所へ訪問して参りました。事業所では、働く高齢労働者が増加する中で、加齢に伴う起因や身体活動不足、座りすぎに伴う「健康二次被害、災害」が増加する現状です。それらの課題に専門家(保健師・健康運動指導士等)を派遣し、解決に取り組み自主継続が可能となることを支援する事業です。また、ロコモ、フレイル、メタボ、生活習慣病予防等の全ての視点が必要となる事も踏まえる事が必要です。内容は、次に上げるものです。
 (1)PDCAサイクルに基づいた支援
 (2)事業所に合わせた「健康保持増進・予防」に取り組めるように支援
 (3)その場限りではない、働く人が自主継続可能な運動指導の支援
 
 私は、運動指導が専門なので、転倒・腰痛予防、生活習慣病予防に関わる体力測定等を日頃から実施しておりますが、そこに至るまでの準備が必要で、経営者・監督者の事業理解、勤務時間中での体力測定の実施と日程調整、対象者への説明等、事業所内での担当者の方の調整がポイントだと思っています。この度は、広島産業保健総合支援センター(以下「広島産保」)の産業保健専門職(保健師)が丁寧にサポートされ、事業負担や不安も軽減され、当日はポジティブな時間を対象者の方も過ごされたと見受けました。事業所では「集団としての課題」と「個人の課題」があります。
転倒・腰痛のリスクを抱えている人の中には、内科的課題が重複している場合が非常に多く加齢に伴う運動機能(柔軟性、敏捷性、筋力)やバランス機能、視覚・認知機能が総合的に低下する事に加え、運動不足や座りすぎによる心身の老化が更に機能低下をもたらしています。課題がある方に対しては、運動強度の厳守やプログラムへの配慮、服薬中の方への考慮(例:スタチン系の薬の服薬の場合、筋肉への影響等)個人が抱える課題にも対応ができるように基本的なガイドラインに加え、測定項目を追加し、評価・アドバイスを実施する事としました。これらは、広島産保の産業保健専門職、事業所担当者、産業保健相談員(健康運動指導士等)がそれぞれの立場で意見交換することで連携し、事業成果を考えた内容となっています。事業所訪問での体力測定での合間に、実際の運動指導や、労働者の方の生の声や個別の質問への対応も行い、より正確なアドバイスが可能となり、訪問支援の良い面が浮き彫りになりました。個々の意識と実際の測定による現況の乖離を理解し、認識していただくこと、評価だけやコメントだけではなく、その場限りではない継続できるものとし「安全に安心しておこなえる、運動プログラム」を具体的に個別運動指導票でフィードバックしています。健診やストレスチェック、体力測定後に具体的に何をしたらいいのかわからない、正しい運動方法がわからない、運動する時間や職場環境が整備されていない等の声を耳にします。この事業では、そのあたりを具体的に示し「健康経営」の視点も交え、事業所にアドバイスを実施しています。
 
 ・経営者や労働者の意識の改革(ヘルスリテラシーの向上)への具体的アプローチ法
 ・「自然と運動がおこなえる仕組み(職場環境の改善や工夫)」の例
 ・事業効果を「見える化」することによる評価と今後の継続支援のサポート
 ・労働者が健康づくり、災害防止に取り組むことを「キャリア開発」として捉え評価する例
 ・エビデンスに基づく正しい運動の「情報」を提供し、楽しく継続できる仕掛けづくりの例
 ・運動の専門家(健康運動指導士)の活用の例
 
 運動の捉え方を「身体活動(生活活動+運動)」として捉え、元気な方も課題がある方も、自らが継続して行えるように予防(セルフケア)を実践し、未然に災害や病気をする時代です。“健康は最大の富”であり、事業所にとっては「人を財産、資本」と捉えて頂けるように、事業が広く活用されるように努めて参ります。
 
 私たちは健康経営に向けた取り組みを応援します。皆さんご一緒に転倒災害・腰痛災害ゼロを目指しましょう。
                     参考:「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(厚生労働省)
                         https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10178.html