独立行政法人 労働者健康安全機構広島産業保健
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センター通信

産業保健相談員レター 2025年5月 ~「 三方よし」 と健康経営~

2025.04.30

産業保健相談員(産業医学担当) 吉岡嘉暁
 

ある職場に仕事で行ったときに、「人財になるための7つの条件」 というポスターが事務所に貼って有りました。

人材ではなく、人「財」でした。従業員みんなが成長して会社にとっての財産になろうということでしょう。

 

上記のポスターにあった7つの条件を紹介します。

1、明るく、元気なあいさつができる。

2、言われなくても、自分で考え、行動できる。

3、人がイヤがることでも、進んで取り組める。

4、常に 「どうしたらできるか」 を考える。

5、仕事の期限を、きちんと守ることができる。

6、ミスやクレームなどの報告を、すぐにできる。

7、人が見ていなくても、手を抜かずに仕事ができる。

 

人財になるための7つの条件はどこの企業でもあてはまると思いました。

しかもこれは健康経営とも関係があるとも思いました。

なぜかというと、健康経営は従業員と経営層のコラボレーション(協働)がないと成功しないと考えているからです。

今の不透明な時代の荒波を企業がしなやかに生き延びていく為には、このコラボレ-ション(協働)は大切で必須なことでしょう。

従業員とともに生き延びていくことは企業の社会的責任と思います。

 

健康経営という言葉は最近出てきたものですが、かつて日本にあった商道の考え方を含んでいるように思えます。江戸時代中期の近江商人の商道に 「三方よし」 というのが有ります。自分だけが儲ければよいという考えでは、商売は長続きしない。自分のことよりもお客のことを考え、みんなのことを大切にして商売をすべきという考え方です。

 

①売り手よし

②買い手よし

③世間よし

 

これらは今でもりっぱに通用する企業経営の考え方であると私は思います。

互譲と融和の感じられる日本的と言える 「企業の社会的責任」 がにじみ出ていると思います。株主利益を重視し過ぎる欧米流の考え方よりは好ましく思います。

古来の日本的な良いものを現代の企業は忘れているのではと気がかりです。

私なりの現代風な 「三方よし」 のアレンジ(表現)を考えてみました。

今風の 「三方よし」 とは何だろうかと頭をひねってみると、次の3つになりました。

 

①消費者よし

②従業員よし

③株主よし

 

株主利益ばかりが優先される現代の風潮には不安になります。株主も自分に利益をもたらしてくれる消費者や従業員との共生の考えがあると良いと思います。自分さえ儲かればよいというのは、企業の社会的責任の放棄に思えます。お互いを認め合う三方よしの企業にはなれないものでしょうか。

 

これからの時代の産業保健スタッフのミッション(使命)は、経営層と従業員による健康経営の健全なコラボレーション(協働)を生み出していくことではないかと考えています。このミッションを旗印に、従業員と経営層が力を合わせて現代を力走する健康経営企業を目指してしてほしいと思います。